全体主義へ
まずは、昨日の北海道新聞記事より一部抜粋。
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2006年09月05日北海道新聞一面掲載
連載 「自民総裁選の底流 安倍政治の行方1」
国家主義台頭に危うさ
…保守系の論客らでつくる「『立ち上がれ!日本』ネットワーク」は八月二十九日夜、「新政権に何を期待するか」と題して都内でシンポジウムを開いた。同ネットの呼びかけ人は中西輝政京大教授、八木秀次高崎経済大教授ら、安倍氏の政権構想づくりにもかかわったとされるブレーン。安倍氏の持論の「草の根保守」の支持層拡大に向け、全国で支部設立を進めている。
出席した自民党の下村博文、稲田朋美両衆院議員、山谷えり子参院議員は、小泉首相の靖国参拝への礼賛や、中国、韓国批判、歴史教科書の検定強化などの主張を次々に展開した。
いずれもタカ派で熱心な安倍支持の中堅・若手。稲田氏は、地元福井の新聞で首相の靖国参拝を批判する加藤紘一元幹事長と対談したことを紹介。加藤氏の実家が右翼団体幹部に放火された事件について「対談記事が掲載された十五日に、先生の家が丸焼けになった」と軽い口調で話した。約三百五十人の会場は爆笑に包まれた。言論の自由を侵す重大なテロとの危機感は、そこにはみじんもなかった。…
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赤字部分を読んで以来、生理的な気持ち悪さが消えない。記事中の稲田氏の発言がどのような文脈で為されたかは不明だが、たとえどのような文脈で為されようと、会場が爆笑に包まれるという事態は異常である。この人たちは、民主主義における最低限のルールを共有していない。恐ろしさを通り越して、どうにも気持ちが悪くて仕方がない。
加藤氏の自宅放火事件に対して、「当然だ」「ざまあみろ」と個人的に思う人がいても、決して不思議ではない。そのような人たちが集団を形成することも、別に不思議ではない。しかし、そこへ政治的勢力が同調することになると、様相は変わってくる。彼らは何とはなしに公の空間で正統性を獲得し始める。
今回の加藤氏の自宅放火事件に対して、この国の政治的トップたる小泉と阿部は、非常に鈍い反応を示した。二氏ともにこの事件に言及したのは、8月28日、事件から13日後である。この反応の遅さは何を意味するのか。その2週間という期間に、消極的なテロ容認の空気が醸成されたと感じたのは私だけであろうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060828-00000011-san-pol
こうした状況下での、本記事中の稲田氏の「丸焼け」発言と、会場の爆笑である。「加藤氏はあんな発言をするから放火されても仕方がない」という<ホンネ>が、公的な内輪空間で一体感とともに正統性を得た瞬間である。笑いに理屈はない。加藤氏自宅放火事件は、断じて爆笑ネタではない、というある種の教養すら、ここでは軽く飛び越えられている。
また、笑いは差別的側面も持つ。稲田氏と加藤氏とは、仮にも同じ政党の構成員であるが、ここには「我々」と「彼ら」という明確な線引きがある。「我々」は安全だが、「彼ら」は危険に直面しても仕方がない存在である。なぜなら、「彼ら」は「我々」を批判するからである。「我々」には安倍という次代のトップがついている、と。
記事によれば、党内の若手タカ派の増長に対しては、山崎拓ですら懸念を示しているという。
全体主義は、決して上からのベクトルのみで形成されるのではない。全体主義は、上からのベクトルと下からのベクトルが互いに呼応しあって初めて完成する。つまり、全体主義の完成には、下からのベクトル、すなわち大衆側からの熱い呼応が必要不可欠である。どちらが先かは問題ではない。
かつて、五・一五事件や二・二六事件などのように、言論が暴力で封じられた時代があった。戦後も朝日新聞襲撃事件や、本島長崎市長・銃撃事件などがある。田中均・元外務省審議官宅に時限式発火物とみられる不審物が仕掛けられた事件では、お約束とは言え石原慎太郎東京都知事が「当たり前」と発言して問題となった。
嫌な感じが皮膚感覚で残る。テレビは朝から紀子さんの男児出産のニュースばかり流している。個人的に平和主義の今上天皇は、札幌でニコニコと公務をこなしている。私は、時代を傍観していることしかできないのだろうか。
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コメント
初めまして。実はこの稲田議員の発言についてはマル激トークオンデマンドというネット番組にて山口二郎北大教授が話しているのを聞き知りました。北海道新聞以外ではほぼ話題になっていないのではないでしょうか。このシンポジウムでは同議員の「徴農」発言が産経紙上に載ったことで議論を呼びましたので、少なくとも産経が取材に来ていたはずなんですが、そこはさすがに空気を読んだということでしょう(ここは書いちゃまずいな、と)。
あの産経ですら社説では加藤氏へのテロを非難していましたから。でも彼らの本質を知るためにこの件はもっとよく知られるべきだし、報じられるべきかと思います。
それにしてもついにここまできたか、という感がしますね。
投稿: もなか | 2006年10月 1日 (日) 22:11
はじめまして。
稲田朋美で検索して、伺いました。こんな発言と聴衆の反応があったとは知りませんでした。ここまでひどい人だったとは。
ナチスの一党支配に道を拓くことになる1933年のドイツの国会議事堂放火事件を思い出しました。
投稿: とむ丸 | 2006年10月 2日 (月) 00:38
コメント有難うございます。実は私も稲田氏のことは全く知りませんでしたが、今HPのプロフィールを見て、弁護士だったことを知りました。え~~弁護士であの発言? 脳!
渡部昇一センセイを尊敬している、とも。自分で布団も掛けられない人なのに?(布団にじっと横になって、奥さんが掛けてくれるのをじっと待っているらしい) まあ誰を尊敬しようと自由ですけど…
仰る通り、ついにここまで来たか、の感あり。表現の自由とは、ヒットラーにすら認められるべき権利です。一度失われると脆いからこそ、絶対的な保護を必要とする、と私は理解しています。
投稿: 静内人 | 2006年10月 2日 (月) 16:38
自分の思想に合致したら「社会的制裁」だなどと妄言を吐いてテロを容認する人間こそ、本当のテロリストですね。
投稿: パコ | 2006年10月 4日 (水) 17:52
安倍氏を批判する田中真紀子氏の自宅にも、繰り返し脅迫電話があるという報道がありました。小泉・安倍の無言の13日間が消極的・間接的に影響したもののように思えてなりません。
加藤氏の事件では、一応党内野党とは言え同じ政党の議員ですから、田原総一郎氏に吼えられてか知りませんが、しぶしぶ言及した感がありました。しかし、田中氏の場合はそもそも他党ですから、安倍氏も知らんぷりです。
言論に対する暴力は、右左を問わず民主主義政体下では絶対的に否定すべきものです。過去に見るとおり、表現の自由・言論の自由というものは、実は非常に脆いものです。雰囲気や世論、自粛等々、一度萎縮しだすと後は坂を転げ落ちるが如くです。だからこそ、絶対的な保障を必要とする、と私は理解しています。特に、公人たる地位にある者には、その保護の義務があるとすら思います。
が、もしかして安倍氏が必要とするのは「自分に都合のいい言論のみに認められる表現の自由(後は知らん)」なのかもしれません。
投稿: 静内人 | 2006年10月 5日 (木) 14:38
朝日新聞の夕刊でシリーズ物「阿部政権の空気」で稲田さんがでていたので、検索したら、静内さんにもたどり着きました。 初めに、赤ちゃん可愛い・・抱きしめたくなりますね。 若いお母さんに関わらず、「全体主義へ」のご意見に関心し、共感しました。 弁護士でありながら、「丸焼け発言をし、会場の爆笑を誘う」ことは
許せないですね。 こんな空気が日本をおおうのは防がないといけないと思います。 時々寄りますね。
朝日の記事が、この発言を乗せないのはケシカラン。
静岡、鈴木
静内と静はおなじだけど、気候は大違い
投稿: 鈴木 | 2007年3月14日 (水) 21:36
メルアド間違えました、partita@yr.tnc.ne.jp
です。
阿部政権でなくて安倍でしたね。
もっとも、かの有名な、きっこのブログのきっこ
さんは、アベシンゾーですがね。
投稿: 鈴木 | 2007年3月14日 (水) 22:18
鈴木様、ご訪問&コメント有難うございます。お門違いの正義感に燃えた三代目政治家・安倍晋三とその仲間達に、日本が破壊され尽くさないうちになんとか食い止めたいものです。しかし、そんな安倍政権の空気を支持する層が結構多いように思えるのは本当に謎です。
朝日の特集のおかげか、また本記事へのアクセスがちらほら増えているようです。私は北海道新聞と日高報知新聞しか取ってないローカル人間なので、残念ながらその記事は読めません。図書館ででも後でチェックしたいところです。
>若いお母さんに関わらず、
あ、どうもすみません。37歳で第一子を高齢出産の、若くない新米母さんです。あと、一般に「若いお母さん」はこのような問題に無関心という前提のように読めなくもないのですが(揚げ足取りでしたらどうもすみません)、もしそうだとすると、当該層の女性は心外かもしれません。。。 確かに乳飲み子の世話は大変なので、そういった問題にまで関心を払う余裕がないのは事実ですが、それは単に「余裕がない」だけで、「関心がない」ことと同じではありませんので。。。
きっこのブログ、私も見てます。私のブログも時々ご訪問頂けると幸いです。。。が、現在のところ生後2ヶ月の乳飲み子の世話が最優先なので、しばらくはブログ更新まで手も頭も回らないと思います。必ずいつか戻ってきます?ので、またその時はどうぞよろしくお願いします。
投稿: 静内人 | 2007年3月16日 (金) 12:09